仕事を辞めてから日曜の夜が楽しみになった。
出歩くのにこれほど静かで快適な時間はないからだ。翌日に差し支えるのでできなかった夜遊びが、今は当然になっている。もっともこれも再就職までのつかの間の幸せだが……
先日伊勢崎界隈のレトロ自販機店を巡ったので、今回は行田市の鉄剣タローに足を運んだ。
鉄剣タローは自宅から28kmほどの近場でいつでも行けたが、道が悪かったり混んだりで訪問を先延ばしにしていた。

国道17号バイパス行田市下忍交差点から200mほど北へ行くと鉄剣タローが右手に見える。看板の灯りは消えているので車では通り過ぎてしまうかもしれない。
うちから近いのでママチャリで訪問した。店先には2台の車が止まっていたが店内は無人だった。

外の看板は真っ暗で肉眼でもよく見えなかったので、三脚を使って長時間シャッターで撮影した。
写真は一部を除いて三脚を使って撮影した。

入口から左を見る。
妖しいライティングがエロティックなムードを醸し出しているが、店内は自販機とゲームしかなく、いかがわしい所は何もない。
だだっ広い店内の壁沿いに自販機がズラッと並んでいる。

入口から右を見る。
壁に奇妙な絵が描かれたこの広いスペースは、かつて「TOKYO TRIBE」という映画の撮影に使われたそうだ。ストリートギャングの抗争を描かれた作品らしく、評価はあまり高くなかったようだ。


最初に目に付いたのがロッテのアイスクリーム自販機。2012年に故障したようで残念ながら稼動していなかった。
自販機盤面の書体が新しいので、さほど古い物ではない気がするが、それでも今となっては希少な自販機だ。

昔のアイスの自販機は見本に本物の外箱を展示していた。そのせいかこの手の自販機は窓がよく割られていた。



トーストサンドは「ハムサンド」のみ販売。ハンバーガーは「チーズバーガー」のみ販売されていた。いずれも220円。



日清カップ麺の自販機とうどん・そばの自販機。
カップ麺はすべて200円で市販品と同じ物なので珍しさはない。うどん・そばの自販機は「天ぷらうどん」のみ販売されており、そばは販売されていなかった。価格は300円。

うどん・そばの自販機は調子が悪いらしく、注意書きが貼られていた。どうやら買った後に商品が出ないことがあるらしい。
補修部品が不足し、部品があってもそれを直す技術者がいなければどうにもならないのがレトロ自販機の悲しい宿命だ。

なんだろうと近づいて見ると花だった。
オーナーの趣味だろうか。ご自由にどうぞと書かれている。
花を育て、花を愛する人は心が広くて優しい人だと思う。過去何度か植木を買って育てたが、ちょっと手入れを怠るとすぐに枯れてしまい、簡単そうで手間がかかるのでいつしか買わなくなった。
手間を手間と思わず、愛情をもって育てる人でないとこうはうまく育たない。丁寧に育てられた花や注意書きなどの何気ない文章を見るとオーナーの心優しさが伝わってくる。

鉄剣タローが紹介された埼玉新聞(2015年1月11日号)の切り抜きや、来訪者用ノートなどが置かれた展示スペースがあった。
記事には「ちょっとしたブームで客は増えたが、売り上げは依然として厳しいようだ」という趣旨で結ばれていた。もっともな指摘だと思う。実際それがレトロ自販機店の置かれている現実なのだから。
来訪者用ノートは8冊目に達していた。

チーズバーガーを食べた。箱と中身は先日立ち寄った群馬県太田市のドライブインセゾン(記事)とまったく同じだった。
★製造販売元
(有)マルイケ食品 群馬県伊勢崎市茂呂1828-5

裏面。子供の頃見た自販機バーガーの箱と似ているが、昔はハンバーガーを持った人の絵が描いてあったので別物だろう。


妖しい照明でハンバーガーが毒々しい色になってしまうので、この2枚はホワイトバランスを修正した。
大きめのハンバーグにとろりとしたチーズが絡まって美味しい。カロリーを気にしているので1個で止めたが、食欲に任せて2~3個ペロッといってしまいそうな美味しさだ。


ビデオゲーム筐体はエアロシティやアストロシティなど。4in1ゲームを含めて20台ほど稼動していた。
なにか他の店と違うと思ったらパチンコ・パチスロの筐体が無かった。客層的には無いほうが嬉しいが、他自販機店の客を見るとパチンコ・パチスロを遊ぶために来ている人ばかりなので、ビデオゲームだけでは厳しいのではないかと心配してしまう。
パチンコ・パチスロを置かないのもオーナーの考えなのだろうか。

がらんとした妖しい光の店内に一人たたずんでいると、時間の感覚が麻痺して家に帰ることを忘れそうになる。
このまま朝までいようかなと思いたくなるちょっと危険な魅力をこの店は持っている。さきほどの埼玉新聞の記事によると、大晦日は互いに名前も住所も知らない者同士が毎年のように集まるそうで、集まる理由は「なんとなく居心地が良いから」だそうだ。
今度来たとき鉄剣タローは無くなっているかもしれない。合理化へ突き進む現代社会の仕組みから外れすぎているからだ。
“なんとなく居心地の良い場所”がまた一つ失われるかもしれない。だが支える気もその力もない私が何を言っても、それを望まない人たちの心には響かないだろう。
★鉄剣タロー(地図)
・埼玉県行田市下忍315
・24時間営業
・設置自販機:ハンバーガー、トーストサンド、うどん・そば(うどんのみ)、日清食品カップ麺(2015年5月24日現在全て稼動)
・最寄り駅:JR吹上駅(2.8km)、秩父鉄道行田市駅(2.6km)
※最短駅は秩父鉄道持田駅(2.4km)だが経路が複雑。
※バスは朝日バスの吹上経由便が便利。
JR吹上駅⇔行田折り返し場(行田本町)を結ぶ便(佐間経由と前谷経由があるがどちらでも良い)に乗る。佐間経由は「下忍上分バス停」が最寄りで前谷経由は「西駒形バス停」が最寄りになる。鉄剣タローは両停留所の中間辺りにある。
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