入川森林軌道 - 上部軌道 -
入川渓流観光釣場から4kmほどの遊歩道を一般的に「入川森林軌道」といい、その終点の赤沢谷出合(荒川源流)の先の登山道を経由した森林軌道を「上部軌道」という。
上部軌道は2009年10月(記事はこちら)に一度行っており、その時は途中の道の崩壊により探索を諦め引き返した。
ところが同年の冬、ある親子が上部軌道を終点まで踏破した話を耳にし、崩壊地点をどうクリアしたのか疑問を抱き、また前回消化不良に終わった悔しさから、いつかリベンジしようと考えていた。
今回は鉄道跡などの紹介は省略し、上部軌道踏破への攻略を重点的に紹介したい。森林軌道の歴史などについての概略は先のリンクに記してあるので、興味のある人は参照してほしい。
川又バス停。中津川行きの一部の便がここに乗り入れているだけなので、一日上下3便ずつしか来ない。
始バスの到着が9時25分。終バスの発車が16時36分。
登山地図のコースタイムを見ると、バス停から赤沢谷出合まで2時間になっている。それを元に、上部軌道を探索できる時間を逆算すると、休憩時間を差し引いて最長3時間30分ほどになる。
入川渓流観光釣場。看板が新しくなっていた。
自家用車はこの釣場まで来られるが、公共交通機関の場合はバス停からここまで歩くことになるので、その分時間が掛かる。
あまりのんびりできないので撮影は手短に済ます。
遊歩道の途中にバリケードで道がふさがれている箇所があるが、普通に通れる。ここは左のバリケードを越えて進めばいい。
今回は上部軌道の崩壊に備えて補助ロープやテープスリングを持参したので、その分荷物を減らすため機材はコンデジだけにした。
コンデジはこういう薄暗い場所ではすぐにぶれるし、ストロボのチャージが遅いので撮影に無駄な手間と時間が掛かる。
だがデジタル一眼レフは首から提げて使うには邪魔で重い。登山における重量増と容積増は切実な問題だけに、画質と重さの兼ね合いにはいつも頭を悩ませる。永遠の悩みの種だと思う。
早く先に行こうと思っているのに、綺麗なのでつい足を止めてしまう。
これは不可抗力としかいいようがない。
私が悪いのではない。景色が良すぎる入川森林軌道がいけないのだ。
『こんなことしている場合かよ』と思いつつ、遊歩道終点の荒川源流(赤沢谷出合)で記念撮影をするshige42歳厄年。
では本番。
赤沢谷出合から吊橋を渡り、さらに急な登りを経て15分ほど歩くと「十文字小屋」と「山道」の分岐に着く。ここを「山道」へ進む。
↑の地図でいうと赤い線が上部軌道、青い線が十文字小屋方面、両方の線が分岐する交点が「十文字小屋」と「山道」との分岐点。
※以降、この地図を元に解説を加えていきます。写真はクリックすると拡大するので見えにくかったらクリックして見てください。
地図上の①。擁壁の手前の沢を渡る地点。
この沢は地図上には無いがコンパスと現地の地形から特定できる。
地図上の②。最初の切り通し。
ここも山側の地形が尾根になっているので地形図で確認できる。
地図上の③。大量の板が立てかけられている所。
ここは地形はハッキリしないが、道の形状と方位を見ればなんとなくここかなという目星はつく。
地図再掲。
図解入りの写真は地図上の「崩壊地帯」の最初の崩壊箇所。
ここは若干足場が不安定ながらも高巻ける道があるのでそこを進む。
次の崩壊地点。
「もはやここまでか」と思いたくなるが、ここはさっきとは逆に沢に下り、ガレ場(岩場)を難しそうな所を避けながら進めば越えられる。
地図再掲。「沢が二股に」と記した地点。
たしかに沢が二股に分かれている。それさえ見落とさなければここで現在地を特定できる。
前回より奥まで来れたのは間違いない。
コンパスの示す方角が西に変わったので終点は近い。
地図再掲。地図上④「←針葉樹 広葉樹→」と記したエリア。
地形図の植生記号に加え現地の看板により、地形図の作成以前に針葉樹がこのエリアに植えられたことが分かる。
植生(記号)は時代によって変化するので完全には鵜呑みにできないが、役に立つ機会が多いので侮れない。
地図上に「荒地」と記したエリア。
無数の酒瓶のほか、缶詰やジュースの缶などが転がっていた。
今回来たのは、これら遠い過去の遺物を撮影するためでもあった。
ゴール。この先で沢が二股に分かれるのでここが終点だと分かる。
途中にあった作業小屋は既に解体されたらしい。
廃線跡の有無を確認するため、ゴールからさらに先の二股の沢を行けるところまで行ってみたが、何も見当たらず調査終了。
写真は地図上⑤。右の沢の最終到達地点で撮ったもの。
上部軌道もゴールに近づくとなかなかの景観と雰囲気で、途中思わず足を止めてしまう箇所かいくつかあった。
こんなときだけ四次元ポケットからD700と三脚一式を取り出せたらなぁと考えるが、それじゃ登山にならないといつも考え直す。
悩んだ末、荷物に折り合いをつけたりベストな装備やベストな行動を研究し、更なる高みを目指すのが登山の楽しみ方の一つだと思う。だから不便は不便で受け入れなければならないと思う。
最後に荒地付近で撮影した過去の遺物の一部を掲載。
缶詰の缶とライターのオイル。
書体からしてかなり昔のものなのは間違いない。
コーラの缶。何世代前のデザインだろう。
ざっと調べたところ缶入りのコーラの登場は昭和40年以降らしく、上部軌道の開業機関が昭和26~44年なので時期的には符合する。
私が子供の頃、コーラは缶のほかビン入りが出回っていた。500mlのビンを酒屋に持っていくと保証金として10円もらえ、1000mlのビンは30円もらえた。これで小銭を稼いでゲームセンターに行ったものだ。
スモカという製品。
缶に「愛煙家用」と書かれているので昔の缶タバコかと思ったら、どうやら歯を白くするための歯磨き粉らしい。現在も売られているそうだが缶のデザインは違うものに置き換わっている。
散乱した飯ごうや茶碗などを見ると、現地に何日も泊まり込む重労働だったのかなと思いつつも、大量に転がった酒瓶を見ると、お目付けが来ない山奥で案外楽しみながら仕事をしていたのかなとも思える。
★登山記録
■2013年7月20日(土) 晴れ 最高気温29℃ 最低気温19℃
■コースタイム(バスの発着時刻はリンク先参照)
川又バス停9:25→入川渓流観光釣場9:56→赤沢谷出合(遊歩道終点)10:58→崩壊地帯12:10→荒地12:35→終点12:44~13:20→赤沢谷出合14:23~14:53→川又バス停16:18
■総歩行距離 約16.5km(登山地図と国土地理院地形図で測定)
■交通費(主なもの) 秩父鉄道:羽生-三峰口(秩父路フリーきっぷ)1,400円、西武観光バス:三峰口-川又620円×2
■備考・注意点
・水は常に補給できる。
・赤沢谷出合まではキャンプ場や渓流釣りの人たちが散策に来るのでそこそこ人が多い。その先はほぼ無人なので静かに歩ける。
・バスで遊歩道を散策しに来る人がいるだけあって景色が良い。紅葉の時期は相当混雑すると思われる。
・バスは2013年現在1日3本(土日)しかない。上部軌道は道が細く不安定な箇所があるため、探索時間には十分余裕を持ちたい。
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