20代前半のころ、F1観賞が好きな職場の先輩と渋谷のF1グッズ店によく通っていた。その先輩とは音楽の趣味も合ったので、F1グッズを買った後はタワーレコードに寄るのがルーチンになっていた。
ある日、先輩の都合がつかず一人で渋谷に行ったときのこと。道ばたでオズクラブというリゾートクラブ会員を募るキャッチにつかまった。声を掛けてきたのはスーツ姿の女性2人で、記憶がおぼろげだが名前は住田さんと広田さんだったと思う。住田さんはキビキビした先輩社員、広田さんは入社して間もない後輩といった感じだった。
オズクラブは、運営元の株式会社ブイアイピーと提携するホテルや温水プール、レストランなどが格安(といっても3割引程度)で利用できるもので、使えば使うほど得になる触れ込みだった。
だがそれだけでは最初に掛かる50万円(うち預託金20万)に見合わないし、ホテルやレストランなんか滅多に行かないと私が言うと、住田さんは『もし結婚したら挙式費用が半額になる特典があるから、それだけで元は取れる』とメリットを強調してきた。さらに『会員の申し込みが増えているから、まもなく入会を締め切る。入るなら早いほうがいい』と決断を急かしてきた。キャッチでよくある手口だが、おそらく私が他人に気を遣って優柔不断になる点を見破っていたのだろう。
結局、住田さんに押し切られる形で私はオズクラブに入会した。当初からブイアイピーへの疑念はあったが、各種割引券やパンフレットは欠かさず送って来たのでずるずると会員を続けた。年会費は4万円くらいだった。
その後オズクラブは破綻し、ブイアイピーは会社名を変えて雲隠れした。総額で70万円ほど払ったので当然諦められず、インターネットでブイアイピーの現状とオズクラブの被害状況を調べたところ、預託金は取り返せることを知った。
預託金はすったもんだの挙げ句、月2万円ずつ返してもらう約束をし、12万円返してもらったものの、2006年3月の振り込みを最後に8万円を残して逃げられた。ちょうど例のアットホームな会社に低賃金でこき使われていたころの話である。

※ブイアイピーからの預託金の振り込み記録
長くなったが、振り返ると当時ビシッと断れなかった私が愚かだった。これに尽きる。
他人を傷つけまい、嫌われたくないという気持ちがノーと言えなかった。それが私の良いところでもあったが、人から良いように利用された分、失ったもののほうが多かった。
ちなみにこのオズクラブ(ブイアイピー)の被害は今でもネットで断片的に調べられる。興味があればぜひ。
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