猪苗代の高級温泉宿「静楓亭」
年始に泊まれる温泉宿を探していた際、偶然静楓亭を見つけた。
静楓亭は「一人泊可」、「広い客室(50畳)」、「専用露天風呂付き」、「部屋食(会席料理)」と私が望む条件をすべて満たしていた。
今回埼玉から新潟への旅行中に立ち寄ったが、静楓亭をメインに旅程を組んだほど期待と憧れは大きかった。
料金は一人泊で5万4000円(税・サ込)。
正直高い。だが5万4000円出せば上記の条件をすべて満たしたハイクラスの宿に泊まれると思えば出せない額ではない。
・静楓亭 TEL0242-62-5600
・福島県耶麻郡猪苗代町大道南1640-6
・宿泊日:2017年1月3日(火)
・プラン:るるぶトラベル お正月空きあり!源泉掛け流し 露天風呂付き客室 2食付プラン
ぼっちdeだいじょうぶ度(5段階)
・館内 ★★★★客は少ないが客層が良すぎて若干居心地悪い。
・客室 ★★★★★二重防音に広大な部屋。完全に一人の世界。
・大浴場・露天風呂 ★★★★★客室専用露天風呂
・夕食 ★★★★★部屋食
・朝食 ★★★★★部屋食
猪苗代駅から送迎タクシー(もちろん無料)に乗り約3km。
猪苗代スキー場の南西、磐梯山のふもとに静楓亭はある。
宿に着くとご主人と女将さん、仲居さんの温かい歓迎を受けた。
初めての高級宿で若干緊張があったが、格式じみたお迎えではなくごく自然なほっこりとしたお迎えだった。
チェックインの際、外の池の立派な鯉を眺めていると「客室のお風呂の堀にも鯉が泳いでいるのでご覧ください」と薦められた。
鯉が温泉でも生息できるのを初めて知った。
玄関の様子。
バリアフリー構造で客室内は殆ど段差がなく、室内は手すりが設けられているため足腰の弱い人でも楽に移動できる。
それにしても玄関でこの広さだ。しかもドアの先はまだ客室ではなく、客室へ続く「次の間」である。
さきほどと逆側から玄関を撮影。
まるで団体様専用の部屋みたいだ。
靴は仲居さんがいつの間にか出し入れしてくれた。
静楓亭にこれみよがしなサービスはない。
気が付かないうちにさりげなく世話を焼いてくれる。
トイレは駅の車椅子トイレ並みに広く2畳くらいある。
もちろん広いだけでなく清潔だ。
トイレのスリッパ。
スリッパだけで何足あったっけ……玄関に二足、トイレ、板の間……四足は間違いなくあった。
玄関に二足置かれているのがさすがだ。
二足あれば外への出入り用と室内履き用とに使い分けられる。
12畳の和室。テレビを見たりご飯を食べる部屋だ。
客室紹介には「派手な装飾品は一切なく、高級旅館とは違う何も無い空間をお楽しみください」と謙遜しているが、質素さに見て取れる凜としたたたずまいは高級旅館そのものだ。
寝室(十畳)はさらに凛としており、夜に枕元の照明をつけると、まるで時代劇の殿様の寝室のような装いを見せてくれる。
十畳の大部屋のど真ん中に布団がたった一組。
なんて贅沢な寝かただろうか。
板の間から居間と寝室を左右に見る。
贅沢な空間の使いかただ。
なお客室は居間12畳、寝室10畳、板の間13畳の35畳。
さらに踏込みと次の間が8畳(推定)。そこに脱衣所と内風呂、露天風呂(7~8畳)、中庭を加わるととてつもない広さだ。
一人ではもちろん二人でも持て余すだろう。
客室の大きな照明は明るさを2段階に調整できる。
床の間には掛け軸とテレビ。
50インチはある大型テレビなのに部屋が広いので小さく見える。
板の間から洗面所を見る。この板の間だけで13畳ある。
すべての部屋は床暖房になっている。
板の間も和室も同じくらいの温度に調整されているので和室と板の間を移動する際、スリッパを履き忘れそうになる。そればかりか雪国に来たことを忘れそうになる。
逆側から撮影。
手前のマッサージチェアはいつでも自由に利用できる。
板の間にあるミニキッチンは調理はできない(こんな宿でしたくない)が、コーヒーやお茶を淹れることができる。
また氷入りの冷水が置かれているので、お酒や飲み物に注いだり湯冷ましに一杯飲むのに重宝する。
口コミでよく触れられるコーヒーメーカー。
コーヒー豆とコーヒーミルまであるので好きな粗さで淹れられる。コーヒー好きにはたまらない配慮だ。
冷蔵庫には瓶入り飲料がぎっしり。旅館はこれが無いと始まらない。
個人的には瓶入りウーロン茶と水がなかなかレアで目を引いた。
高そうなお酒がたくさんあったが、あいにく酒は飲めない。
温泉宿でお酒をおいしく飲めたら旅がさらに楽しくなるだろう。こんなときは酒好きが羨ましい。
客室は全部で11部屋しかない。
総平屋の客室がずらーっと並ぶ様はまさに選ばれし者たちだ(笑)。
なお客室間を隔てる壁はすべて二重防音で、隣からの音は玄関付近とおもての露天風呂以外殆ど聞こえない。
宿の名が示すとおり静粛さに関しては完璧だ。
板の間と風呂を結ぶ洗面所。
化粧品は資生堂製でドライヤーもそこら辺のホテルにある物だ。
高級宿では海外のハイブランド品で統一する所が多いが、ここはそういった所は普通の旅館と変わらない。
洗面所から脱衣所へ。
脱衣所にカゴが4つあるので4人での宿泊が標準なのだろう。
湯はシャワーのみ沸かし湯とのこと。
沸かし湯は髪をトリートメントしたり温泉成分を流すときに使うが、せっかくの温泉成分を流すのが勿体無くて一度しか使わなかった。
内風呂は狭い。というか露天風呂があるのでぶっちゃけ必要ない。
客室専用の天然温泉露天風呂。
広さは7畳とも8畳ともいわれ、大人が10人は入れる。あまりに広いので浮き輪を貸し出してるほどだ。
これだけの露天風呂が個々の客室にあるので、他の旅館にあるいわゆる「大浴場」は静楓亭には無い。
湯は緑色の若干鉄サビ臭でなめると甘い。
源泉掛け流しで循環や加水や加温はせず、湯量だけで温度を調節している。温度はチェックイン直前に最終確認するらしく、チェックイン時に客室の湯の温度を確認する仲居さんたちのやりとりがあった。
夜の露天風呂。
質素で凛とした世界は美しく、能の世界を思わせる。
圧倒的な非日常感。時が過ぎるのを忘れそうになる。
しかもこの日は夜から雪が降り、暗闇の空から舞いおりる雪がライトで輝き、まるで蛍の群れのような美しさだった。
雪は翌朝も降り続き、はからずも雪見風呂となった。
大きな雪玉を温泉に入れて溶ける様を見るのがまた楽しかった。
年末年始、この日まで雪は降らなかったそうで宿の人に運が良いと言われた。温泉宿ではなぜか幸運に恵まれる。
露天風呂は4回入った。
客室から近いので大変便利だ。
夕食は部屋食。一人旅なので部屋食は嬉しい。
食事はおしながきにそって仲居さんが運んでくる。
1月なので「睦月」のお題が付いている。
食前酒(左のぶどう酒)と先付け(真ん中の色々乗った豆腐)と前菜(上のおせちっぽいの)。いわゆるオードブル。
肉とブロッコリーは「強肴」といって酒を飲むためのつまみらしい。私は酒は飲まないがたしかに酒には合うと思った。
肉は福島牛で十切れくらいペロッといっちゃいそうな美味さだ。
メイン料理。飯と味噌汁は自分で並べたので適当。多分逆だ。
刺身やかにや山芋は馬鹿舌でも美味いと認識できたが、焼き魚(鰆)が冷たかったのが残念。焼き立てを食べたかった。
米は会津産コシヒカリで一合くらいのおひつに入っている。厨房に電話すればおかわりできるが、おひつの量で充分だった。
余談だが米を残すと「お百姓さんに申し訳ない」と親父にひどく怒られた。なのでよほどのことがなければ残さない。
夕食を食べ終え、厨房に電話すると仲居さんが食事の片付けをすると同時にデザートを持ってきてくれる。
デザートが運ばれたタイミングで朝食の時間を聞かれ、以降部屋には伺わないのでゆっくりお休みくださいと伝えられた。
布団はあらかじめ寝室に敷かれ、必要以上に干渉しないのが宿の理念らしい。かといってサービスが無味乾燥なわけではなく、既に触れたようにこちらが気が付かないうちにごく自然に手を焼いてくれる。
飲み終えた湯のみやコーヒーカップなど、いつ持って行ったか気がつかないほど絶妙な片付けっぷりだった。
その辺、素人には分からないノウハウがあるのだろう。
朝食。蓋を取り忘れたが黄色いおわんの中身は湯豆腐。
飯と味噌汁は私が適当な隙間にねじ込んだので配置は適当だ。
しかし朝食でこれだけ器が多いと後で洗うのが面倒だろう。いつも鍋一つで済ませる自分の惨めな食事とは雲泥の差だ。
朝食の鮭は温かくて脂が乗って美味しかった。
羽織りを来て上座に座ると、こんな私でも多少サマになる。
それでも顔をさらすのは恥ずかしくてモザイクを掛けざるを得ないが。
一夜で大雪となったためタクシーの手配を頼んだ。
自分から頼んだので当然料金を払うつもりだったが、宿と契約しているタクシーとのことで帰りも無料だった。
そういうところを無駄にアピールしないのがまさしく高級宿だ。
帰りも皆さん総出で送り出していただいた。
静楓亭は名前のとおり静かで楓の花言葉のように「大切な思い出」を客にとどける素敵な温泉宿だった。
冒頭で書いたように今回の年始旅行は静楓亭を旅のメインにし、それ以外の旅程を静楓亭にあわせるように組んだ。
それだけ期待するところが大きかったのだが、はからずも期待以上の素敵な宿泊となった。運にも恵まれたと思う。
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