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2015年6月 6日 (土)

太平洋フェリー「きそ」 ロイヤルスイートルーム乗船記

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4月の「いしかり」に続き、「きそ」のロイヤルスイートに乗船した。
「いしかり」ロイヤルスイートルーム乗船記はこちら

「きそ」は2005年1月就航の船舶。
初めに「いしかり」の真新しいロイヤルスイートルームに乗ったので、見劣りするのではないかという危惧があったし、実際そういった面が多少なりともあった。

だがよほどの金持ち暇人でない限り、最上級の客室は何度も乗る機会が無い。限りある機会を無駄にしないためにも、両方のロイヤルスイートを体験しようと、今回はあえて「きそ」に乗った。


船名:太平洋フェリーきそ
乗船日時:2015年5月31日19時00分~6月2日11時00分
乗船区間:名古屋港→苫小牧西港
客室等級:ロイヤルスイート(601号室)
乗船人数:一人
運賃:50,400円(A期間 インターネット予約により一割引)




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太平洋フェリーの好きな点はたくさんあるが、その一つが乗船開始時間。他のフェリー会社が概ね出航1時間前からの乗船なのに対し、太平洋フェリーでは出航1時間半前から乗船が始まる。

乗船時間が早ければより長く客室に居られるし、上位の客室ほどその恩恵は大きい。しかも出航まで1時間半もあるので、部屋の風呂で汗を流し、レストランで食事をしてから悠々と出航を見届けられる。




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5枚連なったレストランの食事券がこれからの長旅を思わせる。
食事券に印字された「ROYAL」は今回初めてその意味を知った。

なお今回は名古屋港→苫小牧西港の完全乗船も兼ねている。




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エントランスホール(5デッキ)。
「いしかり」のホールには圧倒されたが「きそ」も負けていない。




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太平洋フェリーのロイヤルスイートルームは国内フェリー最大の52㎡を誇る。まず52㎡がどれほど広いか図を見て欲しい。

大まかに一等の4部屋分、特等の3部屋分以上はありそうだ。また他のスイートルームすら圧倒しており、セミスイートとの比較ではそこに一等を2部屋足したくらい、スイートとの比較では特等を一部屋足したくらいの広さを誇る。




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★スイート共通サービス


船内入口で乗船券を手渡すと、カードキーをお持ちしますと近くの椅子に座って待つよういわれた。
しばらくすると女性のスタッフがカードキーを持って客室へ案内してくれた。荷物はそのスタッフが持ってくれた。

このサービスはロイヤルスイートルーム、スイートルーム、セミスイートルームの各乗客にのみ行われる。




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★ロイヤルスイート ここが違う!

ドアの前には「いしかり」と違って造花が飾られていた。

スイートとセミスイートが淡い色のドアなのに対し、ロイヤルスイートだけは焦げ茶色の重厚な色使いだ。「貴方の部屋だけは特別ですよ」という配慮が見られると、やはり嬉しい。




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室内に入ったところ。
下の写真のスイッチ類は左から照明スイッチ、カードポケット(主電源の役割)、エアコンの操作盤になっている。
カードポケットにカードキーを挿し込むと客室内の全ての電源が利用できる。またカードキーを抜くと全ての電源が落ちる。

※「いしかり」ではカードキーを抜いて数秒は照明が落ちないのに対し、きそでは即座に落ちる。このように「いしかり」では「きそ」から改良されていると思われる点がいくつかある。


ここで本来はカードキーの施錠と開錠の方法をスタッフから説明されるが、今回は部屋に向かう途中でいしかりのロイヤルスイートを利用したことがあると伝えていたので、操作説明は省略された。




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奥に見えるのはロイヤルスイートにしかないリビングルーム。

★ロイヤルスイート ここが違う!

カードキーを受け取ると、「何時頃レストランに来るか」を聞かれる。これは夕食時(今回は2回)に限りロイヤルスイートの乗客にのみ専用席が用意されるスペシャルサービスである。いしかりの乗船記で口を酸っぱくして書いたが、このサービスはロイヤルスイートの乗客のみの特権なので断ってはならない。

なおこのサービスも「いしかり」と「きそ」で微妙な違いがあった(下記参照)。ただしこの違いが船舶の違いによるものか、スタッフによるものか、たまたまなのかは分からない。

「いしかり」
・指定の時間になると女性スタッフが客室へ迎えに来る。そのスタッフが白いテーブル掛けが敷かれた専用席へ案内してくれる。

「きそ」
・迎えはない。レストランで食券を渡すと「601号室のお客様(※)…」とスタッフのやり取りがあり、蝶ネクタイのチーフらしき男性スタッフが白いテーブル掛けの専用席へ案内してくれる。これはこれで嬉しかった。

(※)食券の「ROYAL」はこのときのためだと思われる




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★ロイヤルスイート ここが違う!

リビングルームは全等級のうちロイヤルスイートにしか無い。1枚目の写真を見て欲しい。部屋が広いので大型の液晶テレビが普通のテレビ並みに小さく見える。この広さがリビングルームの売りだ。

★「いしかり」のリビングルームとの主な違い
・L字型ソファーが扇型になっている
・寝室の近くに短めのベッドがもう一つある
・船首側の窓の近くに外を眺めるための椅子が無い(※1)
・船首側の窓際に水場がある(※2)

(※1)上の写真の椅子は寝室にあったもの
(※2)いしかりでは寝室の奥に水場(と化粧台)がある




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船首側から寝室を見る。
寝室とリビングはレースのカーテンで仕切ることができる。




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★スイート共通サービス


寝室はセミダブルサイズのベッドが二つ並び、「いしかり乗船記」で触れたように、幅が広いので並大抵の寝相の悪さではベッドの下に落ちるようなことはまずない。

窓の反対側に横長のテーブルと椅子が置かれている。椅子のすぐ後ろがベッドなので窮屈だ。椅子をしまうときも手狭なので、見ると椅子とテーブルにぶつけた痕が付いていた。いっぽう「いしかり」はここには何も無く、奥に先述の水場と化粧台がある。この水場と化粧台は位置的に奥まっていて使いにくかった。

体感的には「いしかり」のほうが広く感じたが、個人的にはここには何も置かず、その分寝室を広くして欲しいと思う。




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ベッドの間に置かれた操作盤。
上部はベッドランプや船内放送の調整ボリューム、目覚ましの時刻設定ボタン、各部屋の照明ボタン。引き出しの下はコンセントとフットスイッチで、コンセントはフットスイッチを入れないと利用できない。なおコンセントは寝室に3個、浴室入口の下に1個ある。

「きそ」の照明スイッチは分かりにくかった。
各部屋の照明スイッチがオブジェの照明等にも細かく割り振られているため一括的にオンオフできず、また一部の照明は寝室のスイッチに連動していないため、寝室から操作できないものもあった。




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トイレと浴室がある区画。
左の扉がトイレの入口、右の扉が浴室の入口。




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★スイート共通サービス


浴室は豪華さは「いしかり」、意匠は「きそ」に軍配が上がる。

「いしかり」はシャワールームと浴槽を仕切るガラス張りのドアが圧巻だった。よく考えるとガラス張りのドアなど無くても問題ないのだが、ゴージャスさを演出し、客をその気にさせる仕掛けを施すのは上級客室では重要だと思う。ただしこれは「きそ」が劣るのではなく「いしかり」がすばらしいのだと強調しておきたい。

湯船は「いしかり」同様、大人が寝そべれるほど広い。
シャンプーやボディソープは「いしかり」がボトルで置かれているのに対し、「きそ」はビジネスホテルによくある据付タイプ。




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蛇口などの意匠は「きそ」の圧勝だ。
高級感だけでなく洒落たデザインが見ていて飽きない。




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シャワーと浴槽の蛇口はさらに洒落ている。
高級感と輝かしさもさることながら、左右の蛇口の十字をキチンと揃えたくなる統一されたデザイン性が感じられる。




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便座はふたが自動で開閉するタイプ。(「いしかり」は手動)
便器はウォッシュレット(両船舶共通)で、用を足したあと便座から離れると自動で水が流れるようになっている。(「きそ」のみ)




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ティーセット。奥の銀色の容器は電気ポット。
※後日問い合わせたところ、カップはノリタケ食器製、スプーンは燕物産のサントリーニ ティースプーン ゴールドとのこと。

コーヒーはキーコーヒーのトラジャブレンドが4つ、シュガー8本、ミルク4個。お茶はスティックの煎茶とほうじ茶がぎっしり入っていた。

グラスは2個で、「いしかり」に備えられていたワイングラスと氷を入れるサーバーは見当たらなかった。

下の引き出しは冷蔵庫が入っている。庫内の上1/4が冷凍室、下3/4が冷蔵室になっている。棚にはキズが目立った。




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テレビは何型だかわからないが近くで見るとやはり大きい。
このテレビは地上デジタル放送とBS放送が受信できる。
停泊中はともに受信可能、航行中はBS放送のみ受信可能。

奥は水場。ティーセットのすぐそばなので便利。




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ティーカップは陶器製、スプーンは金色の洒落たデザイン。
※後日問い合わせたところ、カップはノリタケ食器製、スプーンは燕物産のサントリーニ ティースプーン ゴールドとのこと。

カップやスプーンがお洒落だとコーヒーがより美味しく感じる。自宅でもこうしたものにもっと凝ってみたくなった。




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★スイート共通サービス


テーブルには船長のサイン入りカードが置かれている。その上には鳥のオブジェ。このオブジェは浴室にも置かれている。




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寝室に置かれている脱出経路図。
この経路図は各部屋専用になっていて、ロイヤルスイートルームでは601号室の位置に黄色くマークされている。

以上が「きそ」のロイヤルスイートルームの紹介。
同規模の2つの船舶が同じ料金で運航しているので、「いしかり」との比較が多くなったが、不満の多くは「いしかり」と比べたときのものなので、単に乗るだけなら十分に満足できると思う。

また「きそ」では「いしかり」への対抗心(?)かフェリー業界王者のプライドか、レストランではスタッフがキビキビ動き、食事を終えたテーブルを丁寧に掃除するスタッフの姿が印象的だった。




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※6デッキ客室側から見るエントランスホールと展望通路プロムナード

以下、船内の様子など。
この日は多数の空室があったが、スイートクラスの客室はセミスイートルーム1室を除いて埋まっていたようだった。




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※7デッキから階下を見下ろす

閑散期は静かなもので撮影にはうってつけだった。




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※軽食コーナー「マーメイドクラブ」(6デッキ)

スイートはレストランの食事券が付くので、ここはまだ利用したことが無い。通りがけにうどんを食べている人を見たらおいしそうだったので、今度乗船したときは食べてみようと思う。




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※OAコーナー「マルルー」(6デッキ)

コンセントにPCなどを繋げて作業したり、充電したりできる。
無料だが提供されるのは椅子とテーブルとコンセントのみなので、インターネットは利用できない。

コンセントは2等以外の客室にはすべて備わっている。
列車や飛行機のようにコンセントの争奪戦が生じないのもフェリーの良いところだと思う。広々した休憩スペースといい、フェリーは他の交通機関に比べて移動中の心の余裕がまるで違う。




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※売店(5デッキ)

停泊先(名古屋、仙台、北海道)の名物や日用雑貨、おもちゃ、アイスやお菓子などが売られている。深夜と早朝と乗船・下船間際の時間帯は閉店しており、レストランの営業中も閉まっていることが多い。




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※5デッキ中央部

自販機コーナー、ゲームコーナー、大浴場が集まる区画で、往々にして客質が低下するエリアだが、太平洋フェリーではそんな心配は殆どなかった。これも私が太平洋フェリーで好きな点の一つだ。




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※自販機コーナー

飲料とアイスとタバコが売られている。一部を除いてほぼ定価販売。
アルコール類は夜間購入不可。なお臭いと汚損防止のためカップ麺の自販機は置いてないそうだ。




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※ゲームコーナー

どのフェリーでも人気が無いのがゲームコーナー。
8年前に乗った商船三井フェリーではドライバー連中がパチスロに夢中になっていたが、太平洋フェリーはどうなのだろう。




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※大浴場(男湯)

堂々と撮影する所ではないので手短に撮った。
浴槽と着替えのスペースはなかなか広い。

ここに洗濯機と乾燥機を置いてもらえると嬉しい。
名古屋⇔苫小牧航路では3日間40時間船内に滞在するし、替えの衣類を洗濯できずに乗船するケースもある。




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※案内所(5デッキ)

太平洋フェリーの女性スタッフは綺麗な人が多かった。
船内放送をメインで担当していた人は声も綺麗だった。

なお仙台港で一時下船する場合は、受付横の同意書に記入し、当日仙台港入港までに窓口に提出する。下船時間は2時間程度なので一時下船しても港の周辺しか散策できないと思う。


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以下、乗船中に撮影した写真など。


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2015年6月1日 4時55分 千葉県野島埼沖

※撮影:7デッキ甲板




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2015年6月1日 13時29分 福島第一原子力発電所

※撮影:7デッキ甲板




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拡大写真




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福島県沖を北へ航行する

※撮影:7デッキ甲板




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2015年6月1日 16時34分 仙台港に一時停泊

※撮影:7デッキ甲板




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隊列を作る3羽のうみねこ

※撮影:7デッキ甲板




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食べ物をもらえると思っているのか、うみねこの警戒心は低い

※撮影:7デッキ甲板




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2015年6月1日 18時47分 仙台港出航間際の夕闇

※撮影:ロイヤルスイートルームリビングルーム




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2015年6月1日 21時46分 だんだんと名残惜しくなってきた

※撮影:ロイヤルスイートルームリビングルーム




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2015年6月2日 3時49分 八戸沖で見た一艘の船

※撮影:7デッキ甲板




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2015年6月2日 4時6分 最終日の日の出

※撮影:7デッキ甲板




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2015年6月2日 6時43分 最後のセルフ撮影

※撮影:ロイヤルスイートルームリビングルーム




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2015年6月2日 7時2分 窓のほうを向く鳥のオブジェ

※撮影:ロイヤルスイートルームリビングルーム




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2015年6月2日 10時8分

※撮影:ロイヤルスイートルームリビングルーム

40時間の船旅が終わりを迎えようとしている。
船旅の何がつらいかというと、この画面を見るときが一番つらい。このままどさくさに紛れて名古屋に戻れないかなあなどと考えても、やはり最後は船を下りるしかない。

荷物をまとめた後、名残惜しくて全ての部屋をもう一度回った。
リビングのソファに寝転び、寝室のベッドに寝そべり、風呂の窓から外を眺め、玄関に着いたとき、とても切なくなった。




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フェリーを降りるときはどうしてこう、いつも名残惜しいんだろう。
飛行機や列車ではこんな気持ちにはならないのに。

4月の「いしかり」の乗船記の最後に「もし再び乗る機会に恵まれたら、今度はきそのロイヤルスイートルームに乗ってみたい」と書いたばかりなのに、その気持ちが抑えられずもう乗ってしまった。

だが今度こそ、次に乗るのは遠い先になると思う。
もしかしてその機会は来ないかもしれない。だから乗りたいときに乗りたいものに乗っておいて良かったと納得している。

※太平洋フェリー「いしかり」 ロイヤルスイートルーム乗船記

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