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2009年10月18日 (日)

鉄道廃線跡 - 入川森林軌道上部軌道 -

※2013年7月に上部軌道のリベンジを果たしました。記事はこちら


「入川森林鉄道」は昭和44年まで埼玉県奥秩父地方で操業していた森林鉄道で、現在、存在が確認されている軌道だけでも4つある。

1つ目は「奥秩父運輸組合」という組織が敷設した下部軌道で、秩父湖東部の二瀬ダム付近から西の「栃本下」という地区まで荒川沿いを走っていたという軌道。開通は昭和7年。

2つ目は更に西の川又八間橋から「赤沢谷出合」まで入川沿いを走っていた軌道で、入川森林軌道の廃線跡の中では最も有名かつ、最も多くの痕跡が残存している。書籍等で「入川森林軌道」と一まとめに総称されている場合、殆どはこの区間を指しているとみて間違いない。開通は昭和11年。

3つ目上述の二つの区間を結ぶ連絡軌道で開通は昭和7年。

4つ目は2つ目「入川森林軌道」の終点の「赤沢谷出合」から更に上流に敷設された「上部軌道(赤沢作業軌道)で、開通は昭和26年。

…以上、故宮脇俊三著「鉄道廃線跡を歩く X」の記述を参照。


現在、「下部軌道」と「連絡軌道」は舗装されて痕跡が残っていないらしい。また「入川森林軌道」は既に訪れていることから、今回は「上部軌道」を廃線仲間のgamiさんと巡ることにした。



起床は4時半。
最近は便が同じ時間に出なかったり一日数回に分けて出る状態が続いていたが、今朝はとりあえず出てくれたので安心する。しかしそこで気が緩んだのか、髭を剃り忘れ寝癖を直すのを忘れたまま家を出てしまった。

無精ひげをジョリジョリとさすり、ぴょんと跳ねた後ろ髪を手で押したり指で曲げて戻したりしながらgamiさんの車に乗り込み、5時半に出発。





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近くのコンビニで朝食と行動食を買い、R125~R254経由で秩父を目指す。

道の駅あらかわで小便を済ませてgamiさんが脱糞し終えるのを待っていると急に“大”がもよおしてきた。最近は朝に一度“大”を済ませた後、も再びもよおすことが多く、これが出先などのどうにもならない場所やタイミングで来るので困る。

先は長いので今のうちに済ませておきたかったのだが、車に鍵が掛かっていてティッシュを取り出せなかったので、gamiさんが戻ってくるのをモジモジしながら待っていると、突然下腹部からゴォーッ、ギュルルーッと変な音が鳴って便意が消えてしまった。後で大変なことにならなければ良いが…





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8時半、入川渓流観光釣場の手前の駐車場に到着。

まずは去年訪れた入川森林軌道を、終点の赤沢谷出合まで歩く。
この区間は距離5kmほどの林道でスニーカー履きでも歩ける。

写真は線路がオメガループしていた箇所で林道から少し逸れた所にある。





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柔らかい木漏れ日が差し込み、エメラルドグリーンに澄みきった沢を見下ろしながら枯葉の舞い散る林道を歩いていると、ついついこの林道がフェンスも何も無い断崖に面していることを忘れそうになる。





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ここが赤沢谷出合(荒川源流)。
荒川と二つの沢が合流する地点で水流はそこそこ激しい。

ここには木製のベンチと森林軌道のあらましが書かれた看板と、周辺の山や峠や山小屋などへのアクセスが書かれた看板が立てられている。

今日探索する「上部軌道」は、ここから登山道に取り付き、最初の急登を登って吊り橋を渡り、もう一つの急登を越えた地点からスタートする。





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荒川とアカギ沢との合流地点から上を見上げる。
はるか上方に吊り橋の2本の支柱が見えるのが確認できる。





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赤沢谷出合には上部軌道のほか、沢を横断して直進するルートがある。

その直進ルートの目前に見えるのが写真中央の橋台だが、この橋台とその先に続く山道がいったい何のために作られ、いったいどこへ続いているのか、未だに解明されていないらしい。





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さきほど下から見上げた吊橋。
辺境の登山道には似合わない頑丈な橋なので安心して渡れる。





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吊橋から更に登るとちょっとした平地にたどり着く。
残存物やネットの情報からすると、ここが上部軌道のスタート地点らしい。

一箇所に捨てられた一升瓶は上部軌道操業時の作業員の物だろうか。

高度成長期の慌しいさなか、今と違って何もかもがおおらかだった時代。
作業の合間に物陰で一杯隠れ飲み、それを見つけた仲間と「馬鹿野郎!俺にもよこせ」なんてやりあっていたのかもしれないと想像すると、まだ自分が生まれていない遠い昔の知らない世界での出来事なのに、不思議とノスタルジックさを感じてしまう。





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こんなものを見つけてしまった。
「アクエリアスレモン」……そうそう、こんな商品たしかにあった。

これも作業員が残していったものかと色めき立つも、よく考えると上部軌道は昭和44年に廃線になっているので、その可能性は無さそうだ。たぶん登山客が捨てたものだろう。





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赤沢出合から上部軌道のスタート地点までは、勾配は少々キツイが登りは短く、また踏み跡もしっかりしているので問題なく登れる。
ただ、地滑りが気になって仕方がない。

この先に切り通しが二箇所あるのだが、ウェブの情報によるとその先が地滑りを起こしているらしいのだ。

当たり前のことだが、地滑りは地面が滑りやすくなっているから起こるのであって、そこを通ろうとすれば滑るのは必然で、もし先を進むのであれば、ロープなどの何らかの補助が必要になる。
ただ、ロープを使うにしても支点がなければ話にならない。





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登山道(十文字峠)と上部軌道(山道)との分岐点。
ここまでは特に難所は無い。スニーカーでも問題ないだろう。





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多くの人は登山道を目指すからだろうか、山道(上部軌道)に差し掛かってから上部軌道の残存物を多く見かけるようになった。

写真上から「線路と枕木の跡」、「枕木の墓場」、「橋台(左)と擁壁(右)」





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少し歩くと切り通しが二箇所。

…と、簡単に書いているが、実際はここに来るまで路面が滑り落ちていて進むのにちょっとした覚悟と時間を要する箇所がいくつかある。
とはいえ、ここまでまだ道具を要するほどの難所はない。





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擁壁に枕木が立てかけられている。
不思議な光景だが、誰が何のためにこんなことをしたのだろうか。





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スタート地点から1.5kmほど歩いた場所。ここでリタイアした。

軌道跡は予想通り地滑りを起こしていた。樹木も岩石も滑り落ちているのでロープの使いようがない。
とりあえず地滑りしていない箇所から沢に降りて上りなおせるか探ってみた。沢を何度か左右に渡る必要があるが100mほど先までは進めそうだ。

…だが、その先は地滑りの斜面と岩壁に阻まれている。





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リタイア地点から左上を眺める。
ここまで地滑りを起こしていると支点も何もあったものじゃない。

コンデジの画像なので勾配や距離感が掴みづらいが、写真左の擁壁は上部軌道沿いにあるので、高さは擁壁=上部軌道となる。その高さのまま右に進もうとすると……歩ける道が存在しないのが分かるだろうか。


『残念だけど、この先に行くのは諦めたほうがいいと思います』

そうgamiさんに言うと、同じ事を考えていたらしく即座に納得してくれた。
もし、どうしても行きたいと言うなら、一食分の非常食を抜いてザックごと手渡して自分はここで待機するつもりだったので、良識ある人と行動できて良かったと思う。





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消化不良な廃線巡りになってしまったので、帰路は秩父市街からR299に入って高麗川近辺にあったというセメント工場の廃線跡を偵察した。

ただ残念ながら、廃線跡のほとんどは現在企業所有地となっていて、セメント会社に近い線路跡は、このとおり架線を残すのみになっていた。





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反対に、セメント会社に遠い住宅地側は線路や踏切やバラストなど、ほぼ完全に奇麗な形で現存しており、地元住民の散策路や通勤・通学路に使われていた。


この写真を撮る少し前、隣の踏み切り跡で線路や周囲の風景を一心不乱に一眼レフで撮影しまくっている中学生くらいの少年を見た。

この少年が廃線マニアか分からないが、高齢化が進み、中高年がひしめく廃線マニアの未来に少しだけ明るい光が差し込んだように思えた。

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コメント

土曜日はお疲れ様でした。
終点まで行けなかったのは 非常に残念でした。
でも、今の状況を見れただけでも「良し」としましょう。
たとえ 消化不良でも 怪我もなく、無事 帰ってこそ 良い思い出になるのですからね。

まだまだ 行く所 たくさんあります
よろしく頼みますよ。

投稿: gami | 2009年10月18日 (日) 22時03分

>gamiさん
お疲れ様でした。
最後まで行けなかったとはいえ、こういった地滑りや崖崩れなどでのリタイアは慣れっこなので
今回の廃線巡りが無駄になったとは考えていません。何らかの形で財産となると思っています。

>アカギさん
最近コメントにキレが無くなってきましたね。
鷲巣巌とはいつ決着を付けるのでしょうか?

投稿: shige | 2009年10月19日 (月) 21時34分

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