鉄道廃線跡 - 東武鉄道熊谷線 -
無い袖を振って長距離サイクリングの秘密兵器を買い揃えたのに、あいにくの梅雨空で試走すらできない。
降水確率は30%。微妙な空模様だが、ここ数週間、週末はずっと雨で自転車に乗れなかったので、とにかく走りに行った。
目的地は埼玉県熊谷市。
かつて熊谷市~妻沼町の10kmほどの区間を昭和58年まで運行していた「東武鉄道熊谷線」の廃線跡を巡った。
この廃線跡は以前gamiさんから借りた「鉄道廃線跡を歩く」を読んで近場(約45km)ということで候補地に挙げたが、肝心の廃線跡に魅力を感じず、また廃線跡終点がかつて巡った刀水橋に近いせいもあって、何となく棚上げしていた。
出発は7時25分。
往復100km程度なのでもっと遅く出ても明るいうちに帰れるが、幹線道路が混むので早めに家を出た。
■羽生市「下川崎交差点」(AM8:19 走行距離20.3km 54分経過)
ここはR122とR125の交差点で、イオンで買物するときや羽生駅に行くときに飽きるほど通っている。そう飽きるほど。
ということで、また例の病気がぶり返してきた。
「なにか良いリタイアの理由が無いか」…と。
せっかちな馬鹿トラック運転手のクラクションを浴びながら狭い道路を走っているうち、今朝髭を剃っていないのに気が付いた。
『髭面で廃線跡を巡ったら不審人物に見られないだろうか』
『ここは良識ある大人として引き返して髭を剃るべきではないか』
…と、楽なほうへ考えをまとめようと目論むが、あいにく熊谷には知り合いはいないので髭面でも問題はない。それにいい年した親父が一人で線路や電車を撮影したり地図とにらめっこしていれば、髭がどうあろうと不審人物に見られても仕方ない。よってリタイアの理由としては押しが弱い。
■熊谷市「鎌倉交差点」(AM9:04 走行距離37.2km 1時間19分経過)
こうして結局いつも目的地まで漕ぐことになるが、それでも目的地に近付くと心が躍り胸がときめく気持ちになる。
以前からその気持ちは何か共通すると思っていたが、今日それに気付いた。“恋”だ。そう、初めてのデートで彼女を待っているときに感じるあの気持ちだ。
「自転車を漕いで恋煩い」というのも馬鹿げた話だが、仕組みはどうあれ本当に恋煩いと同じ感情を抱くのは確かだ。
ちなみに帰路に付くときは、日曜の夜に翌朝出勤しなければならないことを思い出したようなやるせない気持ちになる。
■熊谷市「第四熊谷堤踏切」(AM9:09 走行距離37.6km 1時間24分経過)
午前9時過ぎ、目的地に到着。
熊谷市街の車道の狭さと信号の多さに閉口したが意外に早く着いた。
ここからは廃線跡巡り。
前回と同じく探索したポイントで重要な所はアルファベットを振って個別に説明を加えた。廃線跡は紫の点線で表示した。
【A地点】
左の線路が廃線。線路が緑の床を通ってないので一目で分かる。
右の2本のレールはJR高崎線。
廃線の左側の小さなあばら屋のような建物は秩父鉄道の上熊谷駅で、廃駅ではなくれっきとした現役の駅舎だ。秩父鉄道の線路は写真では確認できないが廃線の更に左を通っている。
【B地点】
ここまで並走していた秩父鉄道に別れを告げ、東武鉄道熊谷線の線路跡は右手の白いフェンスの奥に消えていく。
【C地点】
「鉄道廃線跡を歩く - 東武鉄道熊谷線」のC地点はここだと思う。
1/25000の地図にも載ってない狭く細い道の先にあるので、初めて来るときは見つけるのに骨が折れるかもしれない。
熊谷市街は交通量が多いわりに道路が狭い。狭すぎる。
自家用車が細道の塀すれすれを掠めながら往来している。
この廃線跡巡りは停車スペースを見つけるだけで骨が折れるだろう。カーナビ付きの自動車(できれば軽)か自転車が必須だろう。徒歩でも無理ではないが、見所が少ないので途中で飽きるかもしれない。
【C地点】から【D地点】まではいくつか探索可能なポイントがあるが、この区間は廃線跡が消失し、書籍の記事や地図を見てもポイントの特定が非常に困難なので、今回は探索をパスした。
【D地点】
ここは地図と廃線の位置関係の把握が難しいので図示した。
熊谷から来る場合、県道359号→廃線跡→県道341号の順に通過する。
【妻沼高等学校案内板】
ここはどちらでも行けるが、右折先が廃線跡と一致しているため、右に進んだほうが良い。
廃線跡巡りも残りわずか。
見所が少ないので自転車で巡るとあっという間だ。
【E地点】旧妻沼駅(終点)
書籍の写真(H地点)とだいぶ様相が異なっている。
現地はフェンスなどの工作物が立ち並んでいるのに、書籍の写真には丸太の柵と土盛りの跡しかない。
たぶん私が場所を勘違いしたのだと思う。
【F地点】妻沼町中央公民館
気動車は敷地の外の道路からも確認できる。
こうした鉄道廃線跡地を巡り、当時の車両や当時の時代背景が記されたプレートに目を通すたび、時代の移り変わりに逆らえず廃線の末路を辿った鉄道の無念さ、そしてそれを無念で終わらせず後世に伝えようとする前向きな意志が伝わってくる。
【刀水橋】
「鉄道廃線跡を歩く」によると、この東武鉄道熊谷線は太平洋戦争の際、軍事的な理由で群馬県の小泉地区(現大泉町)まで線路を延長する計画があり、この刀水橋の先(群馬県側)に当時立てられた「橋脚」の一脚が残されているらしい。
【G地点】
これが現在唯一残る橋脚で、位置的には刀水橋を渡ってサイクリングロードを500mほど下流(南東)に下ったところにある。
野球場のすぐ真横なので見落とすことはまず無いだろう。
東武鉄道熊谷線は廃線跡の痕跡を発見する魅力には乏しかったが、昔の在りし姿に思いを馳せる廃線跡巡りの本来の目的は満足できたと思う。
刀水橋からサイクリングロード(CR)を下って帰路に着く。
東北自動車道のアンダーパスからCRを外れて高速道路沿いを漕ぐ。
刀水橋から延々と向い風が続いたので距離の割には疲れた。
途中、加須IC辺りで中学生をパスしたとき、その中学生が張り合ってきた。
いつもなら造作も無く千切るのに、今日は向い風を40km走って足が棒になっていたのと、その中学生がカゴに顔が当たるほどの前傾姿勢を取って本気で鬼漕ぎしていたこともあり、姿が見えなくなるまで引き離した頃にはボトルの飲料が空になり、精魂尽き果て自販機で飲料を補給する屈辱を味わってしまった。
【走行データ】
■AM7:25出発 → 13:15帰宅
■総走行距離 104.03km(サイコン読み)
往路(自宅~熊谷駅) 37.6km(Ave27.7km/h)、
復路(刀水橋~自宅) 44.71km(Ave23.8km/h)
※残りは廃線跡巡り中に走行した距離
■諸費用 計413円
パン100円、飲料95+130円、アイス88円
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コメント
利根川の橋脚まで確認しにいくとは マニアですなー。
ちなみに 私は その辺の道 何度も走りました。
私のチャリも新しくなったことだし、
廃線跡、チャリでお供できたらいいなー。
投稿: gami | 2009年7月13日 (月) 22時01分
>gamiさん
新チャリ購入、あらためておめでとうございます。
チャリでの廃線跡巡りは疲れるけど、小回りが効くし、
程よいスピードで回れるので、なかなか面白いです。
今度、ご一緒に行ける日を楽しみにしています。
投稿: shige | 2009年7月15日 (水) 20時58分